こんにちは。郡山市の不動産会社「アイエス宅建」の鈴木です。
不動産の売却では、売却後の税金や諸費用について気になる方も多いのではないでしょうか。
実は状況によって、不動産売却で翌年の健康保険料が上がるケースもあるため、注意が必要です。
今回の不動産売却が健康保険料に与える影響について、加入している保険の種類ごとに詳しく解説します。
また、保険料への影響を抑える方法や、介護保険料への影響についてもご紹介します。
まずは健康保険の種類を確認
日本は「国民皆保険制度」を採用していて、私たちは必ずいずれかの公的医療保険に加入しています。
まずは主な公的医療保険の種類について確認しましょう。
健康保険・共済保険
健康保険は会社員が、共済保険は公務員などが加入する公的健康保険です。
加入者の条件を満たした家族も、被扶養者として加入できます。
中小企業は「協会けんぽ(全国健康保険協会)」、大企業は組合健保、業種ごとの組合健保の加入している人もいます。
国家公務員や地方公務員等を対象とした保険制度である「国家公務員共済組合」「地方公務員共済組合」のほか、私立学校教職員を対象とした「私立学校教職員共済」などの共済もあります。
保険料は給与によって算定される「標準報酬月額」によって決定します。
国民健康保険
自営業者や年金生活者が加入する公的健康保険です。
保険料は所得や世帯の加入者数によって決まります。
都道府県と市町村が共同で運営しており、地域によって保険料の計算方法や料率が異なるのが特徴です。
後期高齢者医療制度
75歳以上の方、または65歳以上で一定の障害がある方が加入する公的医療保険です。
保険料は加入者の所得に応じて決定されます。
不動産売却で健康保険が上がることはある?金額は?
加入している健康保険の種類や状況によっては、不動産売却で翌年の保険料が上がる可能性があります。
保険の種類ごとにどのような影響があるか解説しますので、自分の状況にあてはめてぜひ確認してみてください。
健康保険・共済保険では影響なし! しかし被扶養者は注意
健康保険に加入している会社員、共済保険に加入している公務員などの保険料は、不動産売却をしても上がることはありません。
健康保険、共済保険の保険料は、月々の給与を基準として標準報酬月額によって決定されるためです。
不動産を売却して得た所得(譲渡所得)は、標準報酬月額に影響しないため、保険料にも影響しないのです。
健康保険・共済保険の扶養家族は影響する場合がある
被保険者は不動産の売却で保険料に影響が出ることはありませんが、扶養家族として健康保険に加入している方は注意が必要です。
健康保険・共済保険の保険に扶養家族として入るには年収が130万円未満(保険による)などの条件があり、不動産売却による所得がこの上限を超えると、扶養から外れなくてはいけないことも。
扶養から外れた場合は、国民健康保険に加入することになり、所得に応じて保険料を納めなくてはいけません。
なお、保険組合によっては、不動産売却など1回限りのものは収入とみなさないケースもあります。
詳しくは加入している保険組合や共済組合へ確認しましょう。
国民健康保険は不動産売却で保険料が上がる可能性も
国民健康保険は所得によって保険料が決まるので、不動産売却の譲渡所得があると、全体の所得が増えたことで保険料が上がる可能性があります。
国民健康保険料の計算方法
国民健康保険の保険料は以下の要素で構成されています。
- 所得割:世帯の所得に応じた保険料
- 均等割:加入者数に応じた保険料
- 資産割:世帯の固定資産税額に応じた保険料
- 平等割:世帯ごとの基本保険料
※自治体によって、2方式(所得割、均等割)、3方式(所得割、均等割、平等割)、4方式(所得割、資産割、均等割、平等割)のどれかを採用しています。
アイエス宅建のある郡山市の国民健康保険料は、3方式。
具体的な数字を元に、不動産売却による保険料への影響をシミュレーションしてみましょう。
<郡山市令和6年度国民健康保険税の税率の詳細>
国民健康保険への加入者が1人(45歳)で、基礎控除を引いた所得が400万円の世帯の場合、国民健康保険料は以下の計算で求められます。
- 所得割分:400万円×(7.3% + 2.9% + 2.2%)=496,000円
- 均等割分:23,100円 + 8,000円 + 1500円=41,600円
- 平等割分:18,400円 + 6,400円 + 5,300円=30,100円
国民健康保険料:496,000円 + 41,600円 + 30,100円=567,700円
続いて、基礎控除を引いた所得400万円に加え、不動産売却による譲渡所得が300万円あったケースを計算してみましょう。
譲渡所得が増えたことで影響が出るのは、所得割の部分です。
- 所得割分:(400万円 + 300万)×(7.3% + 2.9% + 2.2%)=868,000円
- 均等割分:41,600円
- 平等割分:30,100円
国民健康保険料:868,000円 + 41,600円 + 30,100円=939,700円
不動産売却による譲渡所得が増えたことで、国民健康保険料が高くなっています。
後期高齢者医療では不動産売却で保険料が上がる可能性ある
後期高齢者医療も所得によって保険料が決定するため、不動産売却で所得が増えると、同様に保険料が上がる可能性があります。
後期高齢者医療の保険料は、被保険者均等割と所得割によって構成され、それぞれの保険料率は後期高齢者医療広域連合によって決定します。
不動産売却後の健康保険料の負担を軽減する方法
不動産売却による健康保険料の負担を抑えるには、適切な経費計上や特別控除の活用で譲渡所得を抑えることがポイント。
保険の種類によっては所得が高ければ高いほど健康保険料が高くなるため、譲渡所得を抑えることで保険料の上昇を抑えることができます。
具体的には以下の2つの方法を活用しましょう。
取得費と譲渡費用の適切な計上
不動産売却による譲渡所得は、以下の計算式で算出します。
譲渡所得=不動産の売却価格 − (取得費 + 譲渡費用)
取得費とはその不動産を取得する際にかかった費用、譲渡費用とは売却のためにかかった費用のことです。
それぞれ以下のようなものが費用として計上できます。
<取得費>
- 売却した不動産の購入費用、建築費用
- 設備費
- 土地改良費 など
<譲渡費用>
- 仲介手数料
- 印紙税
- 測量費用
- 登記費用 など
3,000万円特別控除の適用
マイホームの売却では、譲渡所得から最大3,000万円の特別控除を受けられます。
この控除を活用すると、譲渡所得が0円となるケースも多いです。
譲渡所得が0円なら、不動産売却に伴う健康保険料の増加はありません。
3,000万円の特別控除の適用には確定申告が必要です。
不動産売却の確定申告についてはこちらのコラムで詳しくご紹介していますので、あわせてご確認ください。
不動産売却が介護保険に影響することはある?
介護保険は40歳以上の方が加入する公的保険制度です。
65歳以上の第1号被保険者と40~64歳の第2号被保険者に分かれ、第1号被保険者は年金からの天引き、第2号被保険者は加入している健康保険と一体的に徴収されます。
介護保険料は、会社員・公務員の健康保険・共済保険では標準報酬月額によって、国民健康保険では所得によって決まります。
国民健康保険に加入している場合の介護保険の計算は、先ほどのシミュレーションにも含まれていますよ。
また、第1号被保険者の介護保険料は、市町村ごとの基準額を元に、本人や世帯所得などによって決まります。
そのため、65歳以上の第1号被保険者と、第2号被保険者で国民健康保険に加入している人は、不動産売却によって所得が増えると介護保険料も上がる可能性があります。
不動産売却は国民健康保険料・後期高齢者医療保険料に影響する
不動産売却が健康保険料に与える影響は、加入している保険の種類によって大きく異なります。
国民健康保険・後期高齢者医療の加入者は、譲渡所得があると保険料が上がる可能性があります。
会社員・公務員などの健康保険・共済保険では、本人には影響はありませんが、健康保険の扶養者の所得が増えると扶養から抜け、所得に応じた国民健康保険料が発生するケースも。
不動産売却による保険料の負担を抑えるためには、適切な経費計上や特別控除の活用により、譲渡所得を抑えるのがポイントです。
不動産売却による保険料の上昇は家計にとって大きな負担となることも多いため、事前に自身の加入保険を確認し、専門家に相談しながら計画的に進めることをおすすめします。
郡山市で不動産売却をお考えなら、不動産会社「アイエス宅建」にご相談ください。
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