こんにちは。郡山市の不動産会社「アイエス宅建」の鈴木です。
不動産を残して亡くなった方に相続人がいない場合や、相続人全員が相続を放棄した場合などに、不動産を管理・処分する役割を持つのが相続財産清算人です。
しかし、相続財産清算人にはどのようなことができるのかなど、詳しくわからないという方も多いと思います。
今回は、相続財産清算人の定義や役割をお伝えし、相続財産清算人による不動産売却の流れや注意点を解説します。
相続財産清算人を選任したくない場合の生前対策もお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
相続財産清算人とは?
相続財産清算人とは、被相続人(財産を残して亡くなった方)の財産の相続が明らかではない場合に、被相続人の遺産を管理・処分できる人のことです。
家庭裁判所で申し立てができます。
ここでいう「被相続人の財産の相続が明らかではない場合」とは、以下のようなケースです。
- 戸籍を調査しても、戸籍上相続ができると定められた人がいない、もしくは不明
- 相続人全員が相続を放棄している
また、相続財産清算人が必要となる具体的な例は、以下のような場合です。
- 内縁の夫や妻が財産分与を請求したい場合
- 被相続人が入所していた施設が遺品を処分したい場合
- 被相続人の不動産を売却して借金を返済する必要があるが、相続人がおらず手続きが不可能な場合
相続財産清算人と相続財産管理人の違い
相続財産清算人に似た存在として、相続財産管理人があります。
相続財産清算人は、相続財産の管理、相続人・債権者を捜索するための告知、債権者への弁済などを行います。
一方、相続財産管理人は、相続財産の管理だけを行うという点で違いがあります。
相続財産清算人による不動産売却の流れ
相続財産清算人による不動産売却の流れは以下のようになります。
①相続財産清算人の選任申し立て
相続財産清算人になるためには、必要書類を揃えて、被相続人の最後の住所にある家庭裁判所に選任の申し立てをする必要があります。
選任の申し立てができるのは、被相続人の債権者や、特別縁故者などの利害関係者と、検察官となります。
申し立てに必要な書類は以下の通りです。
- 申立書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本も含む)
- 被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の子(およびその代襲者)で死亡している人がいる場合→被相続人の子(およびその代襲者)の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
- 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本
- 代襲者としての甥または姪で死亡している人がいる場合→被相続人の甥または姪の死亡の記載がある戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票、または戸籍附票
- 相続財産を証明する資料(不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預金通帳の写し、残高証明書など)
- 利害関係人からの申し立ての場合→利害関係を証明する資料(戸籍謄本、金銭消費貸借契約書写しなど)
- 相続財産清算人の候補者がいる場合→候補者の住民票、または戸籍附票
申し立てに必要な費用は、収入印紙800円分、連絡用の郵便切手代、官報広告料の5,075円です。
申し立て内容に問題がなく、相続財産清算人が必要と認められれば、家庭裁判所によって適した人物が選任されます。
ただし、候補者を提出しても、その方が必ず選ばれるというわけではありません。
専門家である弁護士や司法書士などが選ばれるケースもあります。
②家庭裁判所に不動産売却の許可を得て売買契約を締結
相続財産清算人は、家庭裁判所の許可を得なければ不動産売却ができません。
予定の売却価格や売却先を提示し、適切な金額と判断されたら、売却の許可が下ります。
家庭裁判所による売却価格の審査は厳しいため、不動産鑑定士に適切な価格を鑑定してもらうのが一般的です。
売却の許可が下りたら、裁判所の許可を得た内容で売主様と売買契約を締結します。
③売買前に不動産の名義変更をする
相続人のいない相続財産は、法人名義となります。
登記簿上の名義変更は自動では行われないため、個人の名義から相続財産法人へと名義変更する必要があります。
④不動産を売却して買主様の名義に変更する
相続財産清算人が不動産売却を行う場合、競売か任意売却となります。
競売はオークション形式で売却する方法で、任意売却は裁判所が認めた範囲内で売却ができるという方法です。
どちらかの売却方法を選択し、買主様への名義変更である「所有者移転登記」を行うと、不動産売却が完了します。
なお、空き家の相続人がいなくてお困りの場合は、「空き家の相続人がいない?対処法を解説!」も参考にしてみてくださいね。
相続財産清算人による不動産売却時の注意点
相続人がいない不動産を売却するには、相続財産清算人を立てることになりますが、手続きが複雑で、時間もかかります。
また、相続財産清算人の申し立て時には収入印紙代や郵便切手代、官報公告料などがかかる上に、相続財産清算人の報酬や経費として予納金を支払う必要があるケースもあります。
被相続人の相続財産が十分にある場合、そこから報酬等が支払われるのですが、相続財産だけでは報酬等が支払えない場合、予納金は自己負担となります。
金額は、一般的には20万円から100万円程度かかり、思わぬ出費となってしまうことも。
なお、相続財産清算人の業務が終了し、予納金が余っている場合、申立人に返還されます。
複雑な相続財産清算人選任を回避するための生前対策
相続財産清算人の選任を回避するためには、不動産所有者が生前に相続人を決めておくと良いでしょう。
相続人を決めておく方法として、生前に遺言書を作成し、財産を引き継ぐ人や、相続の割合を定めておくことが挙げられます。
不動産を所有している場合、「土地を〇〇に遺贈する」などと明記しておけば、相続財産清算人を立てる必要がなくなります。
遺言書は、偽造や紛失の心配がいらない「公正証書遺言」を作っておくとより安心です。
また、相続人がいない場合は、養子縁組制度を活用し、養子に法定相続人として財産を相続させるという方法もあります。
この場合は、昔からよく知っている人物や心から信頼できる人物を選び、悪用されないようにするのが重要です。
このような生前対策には法的な手続きが必要なため、複雑で難しいと感じることも多いでしょう。
正確にスムーズに進めるためには専門家に相談するという方法もあります。
不動産売却で相続人がいない場合は相続財産清算人が必要
相続財産清算人とは、被相続人の財産の相続が明らかでない場合に、被相続人の遺産を管理・処分できる人物。
相続財産管理人による不動産売却の流れは、まず、相続財産清算人の申し立てをし、相続財産清算人を選任します。
その後、家庭裁判所に不動産売却の許可を得て、売買契約を締結。
売買前に不動産の名義変更をし、不動産売却後に買主様の名義に変更します。
相続財産清算人による不動産売却は、手続きが複雑で、時間や費用もかかります。
相続財産清算人による不動産売却を回避したいなら、遺言書の作成や、養子縁組制度の活用、専門家への相談などを、生前に行なって対策をしておくと良いでしょう。
郡山市で不動産売却をお考えなら、不動産会社「アイエス宅建」にご相談ください。
お客様一人ひとりにあったアドバイスで不動産売買をサポートいたします!