こんにちは。郡山市の不動産会社「アイエス宅建」の鈴木です。
「病気等で農業ができなくなったので生産緑地を売却したい」という方や「相続で取得した生産緑地を売却したい」と考えている方もいると思います。
しかし、生産緑地は一般的な土地とは違い、自由に売却できないため注意が必要です。
今回は、生産緑地について説明し、売却は可能か、可能な場合の流れについてお伝えします。
生産緑地を売却するメリット・デメリットについても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
生産緑地とは?
生産緑地とは「市街化区域」内に存在する農地や山林のことをいいます。
以下の条件を満たした土地は、自治体から生産緑地の指定を受けることができ、農地として農業を営むことが可能です。
- 生産緑地法によって定められた市街化区域内にあること
- 現に農地として適切に管理しており、農作物を栽培していること
- 災害等の防止や生活環境の確保に役立ち、将来的には公共施設の施設としての開発にも適していること
- 面積が単独、または近隣の農地と合わせて500㎡以上であること(市町村条例により300㎡以上に引下げ可能)
- 用排水や設備状況、日照などの面などで農業等の継続が可能な条件を備えていること
- その土地の権利者全員の同意があること
生産緑地という制度ができた背景
生産緑地という制度ができた背景には、都市計画法の影響があります。
都市計画法では、都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に分けました。
都市化が進み地価が上昇した「市街化区域」では固定資産税や相続税が増加。
元から「市街化区域」で農業を営んでいた方に、大きな税負担がのしかかってしまいました。
このような背景があり、生産緑地制度は、「市街化区域」の農地の固定資産税や相続税などの税負担を軽減する目的で生まれました。
都市近郊の農地としての機能を維持しつつ、将来の公共施設用の土地としても計画的に保全していく役割もあります。
2022年問題とは
生産緑地法は1992年に改正され、多くの農地が生産緑地として認定されました。
生産緑地として認定されると、税制面などで優遇を受けられますが、売却や転用などには制限があり、30年間農業に利用しなければなりません。
1992年に認定された生産緑地指定が解除されるのが2022年で、一斉に売却されてしまう可能性があり、不動産市場の混乱や、都市環境の悪化を引き起こす恐れがあると注目されていました。
しかし、特定生産緑地としての認定を受ければ生産緑地の認定を10年延長できるようになったり、生産緑地の使用用途を拡大し農作物を使用した生産所直売所、レストランなども営めるようになったりしたこともあり、現状大きな混乱は防げています。
生産緑地は売却可能?
生産緑地は、条件を満たせば売却することが可能です。
なお、売却を含め、今後の生産緑地の取り扱いには3つの選択肢があります。
- 生産緑地のまま所有しておく
- 特定生産緑地の指定を受ける
- 売却・買取申請を行う
生産緑地のままにしておくと、相続する場合を除き、30年経過後は買い取りの申し出が可能。
固定資産税が増額する前に農地として活用する予定があるなら、生産緑地のままでも良いでしょう。
生産緑地期限の30年経過が近いのであれば「特定生産緑地」の手続きを行うと、買い取りの申し出ができる期間をさらに10年延長でき、税優遇を受けることができます。
特定生産緑地の指定から10年経過後は、営農を継続する場合、10年ごとに更新していくことができます。
売却したいという方は、市区町村に買い取ってもらう方法も。
しかし、市区町村に買い取ってもらえるのはごく少数なため、難しければ不動産会社などに相談してみるのが良いでしょう。
売却可能な場合の条件
生産緑地を売却可能なのは、次のようなケースです。
条件1:生産緑地・特定生産緑地の指定年数が経過した場合
生産緑地に指定されてから30年、または特定生産緑地に指定されてから10年経過すると、指定が解除され、売却することができます。
条件2:病気などで農業の継続が困難となった場合
土地の所有者や農業従事者が病気やケガによって農業を続けることが難しいと自治体が判断した場合、生産緑地の指定が解除され、売却可能となります。
条件3:相続人が営農を行わない場合
その生産緑地で中心になって農業に従事していた方が亡くなり、相続人が農業を続ける意思がない場合、生産緑地の指定を解除でき、売却が可能になります。
しかし、生産緑地を解除してしまうと、農地ではなく宅地とみなされ、税負担が大きくなってしまいます。
また、生産緑地のまま土地を相続してしまうと、相続人には営農の義務が課されてしまいますので注意しましょう。
生産緑地を売却する流れ
生産緑地は、一般的な土地のような売却はできません。
指定を解除し、まずは自治体に買取申請をする必要があります。
ここでは、生産緑地を売却する流れをご紹介します。
①自治体に生産緑地の買取申請する
生産緑地指定解除のための必要書類を用意し、自治体に買取申請をします。
申請から1カ月以内に買取に関する通知がきます。
もし、公園や緑地などの公共施設として利用価値があると判断された場合には、生産緑地指定が解除され、時価で買い取ってもらえます。
なお、生産緑地の買取申請をする際の書類は、自治体やその生産緑地の条件によって異なります。
主な必要書類は下の通りですので、参考にしてみてください。
- 生産緑地買取申出書
- 登記事項証明書
- 申請書に使用した実印の印鑑証明書
- 公図
- 買取を申請する土地の案内図
- 農業従事者証明書
- 医師の診断書(買取申し出の理由が疾病や故障の場合)
- 同意書(申込地の所有権やその他権利を持つ方全員の同意)
- 遺産分割協議書の写し(相続登記が終わっていない場合)
- その他市町村長が必要と認める書類
このような書類が挙げられますが、ケースによって必要書類は異なりますので、各自治体に確認するようにしましょう。
②自治体が買い取らなければ農林漁業希望者へのあっせんを開始する
財政状況などにより自治体が買い取らなければ、ほかの農林漁業事業者に生産緑地のあっせんを行います。
買取あっせん期間は2カ月で、この期間に買い手が見つかれば生産緑地を売却できます。
③不動産会社に売却を依頼する
農林漁業希望者が見つからない場合、生産緑地の指定解除が可能となります。
生産緑地の制限が解除され、一般的な土地として取り扱えるようになるため、不動産会社へ依頼しての売却ができるようになります。
売却すると決まれば売却をスムーズに進めたいですよね。
土地がなかなか売れないとお悩みの方は「売れる土地・売れない土地は何が違う?特徴や売却の工夫を確認!」も参考にしてみてください。
生産緑地を売却するメリット・デメリットも確認
生産緑地を売却するメリット・デメリットをお伝えしますので、参考にしてみてくださいね。
生産緑地を売却するメリット
生産緑地は市街地にあり、都市圏から比較的アクセスもしやすいため、地方の土地などと比べると買い手が付きやすい傾向にあります
また、売却してしまえば税金や管理にかかる費用などの維持費がかからなくて済みます。
生産緑地の指定を解除して所有すると、以前より固定資産税などが高くなってしまうため、農地として使用する予定がないなら売却したほうが良いでしょう。
生産緑地を売却するデメリット
生産緑地を売却するには、先ほど紹介した売却の流れのような手順が必要となります。
通常の土地を売却するよりも、書類の準備や申請などで時間と手間がかかってしまうデメリットがあります。
また、生産緑地から宅地に変更すると固定資産税が上がります。
5年間は軽減されますが、早く売却できなければ税金が高くなってしまうことも。
さらに、生産緑地を解除して売却すると、猶予されていた相続税を納税する必要があります。
高額になってしまう恐れもあるので注意しましょう。
生産緑地を売却するには指定の解除が必要!
生産緑地とは「市街化区域」内に存在する農地や山林のこと。
条件を満たした土地が自治体から指定を受けることができます。
生産緑地制度は、「市街化区域内」の農地の税負担を軽減する目的で生まれました。
生産緑地として指定されると、30年間農業に利用しなければならないという決まりがあります。
生産緑地は売却可能ですが、生産緑地・特定生産緑地の指定年数が経過した場合など、条件を満たす必要があります。
自治体に生産緑地の買取申請をし、買い手が見つからなければ不動産会社に売却を依頼できます。
売却を検討中の方は、生産緑地を売却するメリット・デメリットも確認しておきましょう。
郡山市で不動産売却をお考えなら、不動産会社「アイエス宅建」にご相談ください。
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